2023/10/03 17:53
男性の大切な妊活「風疹の予防接種」
妊活というと「妊娠しやすくなるための様々な取り組み」というイメージがありますが、妊娠した後、胎児が無事に誕生の時を迎えられるような環境づくりをおこなうことも大切な妊活のひとつです。
わかりやすい例を挙げると、女性の葉酸接種。
葉酸には妊娠初期に起こる胎児の先天性異常を予防する働きがあり、妊娠してからではなく、妊娠する前から摂取することで効果があると言われています。
そんな葉酸と同様、妊娠する前からやがてやってくる胎児のために実践したいのが風疹対策です。
近年、風疹の流行に伴って、妊娠希望の女性には風疹の予防接種が強く推奨されています。しかし、女性側だけでは不十分…。
風疹対策はパートナーの男性も一緒に取り組むべき妊活と心得ましょう。
妊娠中の風疹は胎児に大きなリスクが!
風疹とは風疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。
発熱・咳・リンパの腫れ・目の充血といった風邪のような症状と共に、全身に小さな赤い発疹が現れます。
だいたい3日程度で症状が落ち着くため、別名「3日ばしか」とも呼ばれています。
風疹の症状自体は個人差があれど、さほど重いものではありません。問題となるのは、妊娠中に感染した場合です。
妊娠中の女性が風疹に感染すると、本人は発疹や発熱などが現れるぐらいですが、胎盤を通じて胎児が風疹ウイルスに感染してしまい、「先天性風疹症候群」を引き起こします。
先天性風疹症候群の主な症状
・先天性心疾患
・視覚障害(白内障など)
・聴覚障害(難聴)
・発育遅滞や精神発達遅滞
妊娠中の女性が風疹に感染した場合、上記のような障害を持った赤ちゃんが生まれる頻度が高くなります。
頻度は妊娠週数が早いほど高く、特に胎児の重要な器官が形成される妊娠12週未満で風疹に感染すると、約80%という高い確率で先天性風疹症候群を引き起こすことが分かっています。
近年、働き盛りの男性の間で風疹が流行
風疹は度々流行が見られる病気ではありますが、予防接種の普及によって感染者は減少したように思われていました。ところが近年は特に働き盛りの男性の間で流行の兆しにあります。これは「男性のみ風疹の予防接種がなかった時期」「その後、集団接種から個別接種に変わってワクチン接種率が大きく減少した時期」がちょうど、現在働き盛りである20代から40代の子供時代にあたり、風疹の抗体を持たない方(特に男性)が多いからです。
さらに、風疹の流行にはそもそも風疹ウイルスはインフルエンザの約3倍から5倍と非常に感染力が強いことや、子供の頃に予防接種を受けていても年月と共に抗体が低下していることがあるといった事情も関係しています。
感染に気づかずパートナーにうつす恐れが…
風疹の感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染、ウイルスに触れた手や粘膜から感染する接触感染の2通りです。
風疹は潜伏期間中も感染させる恐れがある上に、症状が出ず自覚できないケースがあったり、症状があってもただの風邪と見過ごしてしまうケースがあったりして、知らないうちに周囲の人にうつしてしまうことも少なくありません。
妊活中の男性が風疹に感染した場合、当然、生活を共にしているパートナーの女性への感染リスクは高くなります。
もし念願叶って女性が妊娠した後、風疹に感染し、何の自覚もなく知らないうちにうつしてしまったら…。たった注射ひとつのことなのにと悔やんでも悔やみきれないことでしょう。
「妻が予防接種済みだから大丈夫」は間違い
男性の中には「妻が風疹の予防接種を済ませているから自分は受けなくても問題ない」と考える人もいらっしゃるようですが、それは大きな間違いです。
確かに風疹はワクチンによる予防効果が高い病気です。しかしやはり100%ではない上に、予防接種を受けていてもウイルス抗体が低いというケースも存在します。ですから風疹の予防接種は妻だけでは不十分です。さらに感染リスクを下げるべく、夫である男性も一緒に予防接種を受けるようにしましょう。
また、風疹に感染したまま職場で過ごしたり、公共機関を利用したり、飲食店を利用したり。その行動範囲でもし妊娠中の女性と遭遇してうつしてしまったら…。その女性や家族の心情、これからを考えると、責任は非常に重いといえます。
予防接種をすることで自分だけではなく、生まれてくる我が子を、大切なパートナーを、さらには、出産の時を楽しみに待つ妊婦さんとその家族を風疹によるリスクから守ることができるのです。社会的責任という上でも、ぜひ風疹の予防接種を受けましょう。
「小さい頃かかったから大丈夫」も間違い
「風疹は小さい頃にかかったから大丈夫」といって予防接種を受けようとしない男性もいらっしゃいます。
確かに風疹は一度かかると生涯免疫が作られると言われています。しかし、大人になるまで確実に抗体が残っている保証はなく、ごく稀に感染することがあります。また、風疹にかかったと思っていたものがただの風邪で、実は免疫がないままだったという方もいらっしゃるものです。
小さい頃に風疹にかかったという記憶がある方はもちろん、過去に風疹の予防接種をした記憶があるという人も風疹の抗体チェックを受けてきちんと調べることをお勧めします。
風疹の抗体チェックと予防接種後の避妊
風疹の抗体がどれくらいあるかについては医療機関における採血で確認することができます。
妊活中の男性は、まず最初の妊活としてパートナーの女性と一緒に風疹の抗体チェックを受けるようにしましょう。抗体検査は基本的に自費診療となりますが、風疹の感染対策として、多くの自治体が助成金を出していたり、指定医療機関において無料で実施していたりします。一度お住まいの地域の自治体に問い合わせてみましょう。
なお、女性は風疹の予防接種にあたって、接種前1ヶ月、接種後2ヶ月の計3ヶ月間の避妊が推奨されています。これは弱毒性とはいえ体内に風疹ウイルスを入れるため、ウイルスが胎児に感染して先天性風疹症候群を引き起こす可能性を避けるためです。
一方、男性が風疹の予防接種を受けた際の避妊期間は特に設けられていません。